『ケイ子さんを衣笠に変えてさしあげたくて』プロローグ編
ある日、ネンリキで作業してたらば背中越しにこんなセリフが聞こえた。
「ブーヤン!」
声の主は細川徹さんのご様子。
意味がわからないので構わず作業を続けていると、
「ねぇ、ブーヤン!」
とまた来た。
嫌な予感がした。
俺か?俺なのか?なんか俺の方に向かって飛んできてるけども…
いや、けど俺は「イッガ」な訳でしょ?あなたいつもそう呼ぶじゃない?もしくは本名の「イガリくん」じゃない?「ブーヤン」?そんな馬鹿なっ!
…そう自分に言い聞かせてシカト決め込んだらば、更に彼はこう来た。
「ブッタ豚三くん!」
もう振り向くしかなかった。
その際は「はい!」と元気よく返事をさせていただいた。
そう、俺はデブになった。特に今年の夏場はデブだった。
このブログ開始以来、五月女ケイ子さんの残飯処理やネンリキに届けられる差し入れの処理に全力投球するあまり俺は肥えた。俺をお地蔵さまと勘違いした二人からの度重なる菓子のお供えも多分に影響ありだ。
まぁデブったから「ブーヤン」も致し方ありません。
けど、待ちたまえ!そういう貴方も結構お腹の辺りが軽くヤバイじゃないのよ!
出会った頃のシャープな感じ?不健康そうな感じ?あの感じがもうさっぱりないじゃないの。
俺は細川徹さんのこと「ブーサン」と呼ぶことにした。
そんなブーサンがある日、ブートキャンプをやろうと言い出した。ブーヤンにオサラバしたいと願っていた俺は迷わずこのキャンプへの参加を決意。すでに数年来「ブーチャン」の愛称で皆に親しまれていた二等兵こと佐伯新さんことブーチャン、そしてケイ子さんと共に、タンクトップのおっさんのDVDを見ながら皆で汗を流した。
で、ビールを飲んだ。
で、焼肉屋へ直行した。
カルビに舌鼓を打ちながら、ゴリラの生態について語り合うブーたち。そこから衣笠の話に移行するのに時間はかからなかった。
「衣笠は偏食家で、肉ばっか食ってるらしいよ」
「あぁ、ガサね。俺も聞いたことあるよ、それ」
「そうそう、ほんとに肉だけらしいっすよ。あの人」
するとそれを横で静観していたケイ子さんが突然こう呟いた。
「わたし・・・、衣笠になら、なってもいい」
何を言い出すんだ、と思った。が、同時に胸打たれた。
今、俺たちの目の前にいる女性が衣笠になろうとしている。
この世に女として生を受けた者が、『衣笠祥雄 Sachio Kinugasa』に変貌しようというその決意、その覚悟。
熱いものがこみ上げてきた。涙が出そうだった。
「ブーヤン」ごときでジタバタした自分が恥ずかしく思えた。ブーヤン?ブッタ豚三?もうそんなもんどっちでもいいよ!
そんなことよりも俺は、衣笠を目指すこの一人の女性を応援してあげたい・・・。
これは、人間ドックで医者に「あと5キロ太れ」と言われ、5キロ太るどころか衣笠を目指す五月女ケイ子とそれをサポートすべく、彼女に肉料理ばかり食べさせる男たちの戦いの記録!
